スイカの収穫と泥棒…51話
スイカの栽培ポイント(ゴザエモン流)で取り上げたスイカが雨にも負けず、カラスにも取られず収穫の適期を迎えている。ところがまた、新たな魔の手がスイカに迫っていた。
実は「雑草」をブログにした後、体調を崩した。このところ出張もなかったので、早く帰る日は、夏山に行くトレニングを兼ねて暗くなるまで草むしりに励んでいた。お陰で畑はきれいになったものの、休み無しの俺の体はボロボロになった。もう、無理は効かない体に「草刈機」は必需品と女房に説得されて購入した。
体調が回復した先々週の日曜日、はびこりだした草どもを退治しに畑に行った。きれいになった畑を夕暮れ見回して文明の利器は体に優しいと、満足感に浸った。
ところが何か変なのだ。あるべきものがないのだ。小屋の屋根の修理やオクラの収穫に使うアルミの脚立が無くなっていることに気がついた。
俺の畑は一番奥にあり、後ろは農家の畑で皆の畑の前を通って脚立を持ち出して帰ることになる。キャベツ「みさき」で登場していただいたIさんが数年前ダイコンを盗まれたと大騒ぎしたことをその時思い出した。
信じがたかったが噂ではTさんもスイカを盗まれたと聞いた。スイカなら数が少ないので無くなればすぐに分かる。で、その話は信じることにした。
誰もいない皆の畑を見て回ったが脚立はなかった。どっと疲れが出って家に帰った。家に着くと、草刈機と一緒に買った未使用の10年持つといわれたスコップを外に置いたままであること思い出した。
翌日、また会社の帰りに畑に寄ったところ引退したIさんが畑に一人でいた。スイカの状態を見ていたのだ。俺はトンネル寒冷沙でカラス対策をしているがIさんはスイカの上に偽カラスを吊るしてカラスを脅して近づかれないようにしていた。
脚立を盗まれた話をした。最初は一緒に怒ってくれたがいつの間にかスイカの心配に移っていき収穫時期を聞いてきた。
『受粉から小玉スイカは30日、大玉スイカは約45日で収穫するのがベストだと言われている。』と教えた。
『小玉スイカだが受粉時期は分からない。』他に判断する方法はないのかと言われたので音で判断すると教えた。スイカを見てくれというので叩いたが俺には分からなかった。
俺も受粉は虫たちに任せているので日数からは正確には分からない。ピアノを習わせた子供たちに音でスイカの収穫を判断させていた。でも近年付き合いが悪くなり、今年からは俺が決めなければならない。
『カラスはごまかせたのに頭の黒いヤツは騙されない』と偽カラスを見つめてIさんは嘆いた。Iさんには孫がたくさんいて、少子高齢化などこの一族に関係ないのである。
『スイカの一つ一つに孫達の名前書いておく』とIさんのつぶやきを聞いて俺は家に帰った。
先週の金曜日、会社帰りに山に持って行く「アイコ」を収穫しに畑に寄った。Iさんのスイカが気になり見たところ、不気味な偽カラスの下で無事なようであった。安心した。
山に行けば当分畑に行けないので、ついでに俺のスイカも確認した。
『ん… … スイカがない?』
いくら世知辛い世の中だといってもスイカまで盗むことはないではないか。
焦った俺は寒冷沙の中を手探りした。何か大きなものが手に触れた。
安堵が広がった。俺の栽培しているスイカは「タヒチ」という黒の大玉スイカで、夕暮れであったので分からなかっただけであった。
山から帰った翌日、スイカを収穫に行った。もう45日は過ぎたと思ったのだ。二つ収穫して帰った。
今年は早い時期に発芽に成功したのでお盆前に家族で甘いスイカが食べられた。
でも脚立は戻ってこない。
盗んだヤツは心が無いのだろう。
かわいそうに。
この頃、かわいそうなヤツラが増えたようだ。
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