恐る恐るおすそ分け「トウガン」・・・第13話
昨日、Mさんから生姜をもらった。俺の大好物だが、家族が食べないので栽培していない。御礼に秋茄子をさしあげた。
Mさんは東京から市原にある「山の農園」に奥さんと月1~2回やってくる、里芋栽培の達人である。Mさん夫婦はこまめに収穫する必要のある果菜類は作っていない。要するに手間がかかる野菜はここでは栽培していのだ。
そのMさんが「トウガンは作っていなよネ~」と聞いてきた。トウガンは栽培していなかった。数年前、そのトウガンをMさんからもらった。昨年はHさんからおすそ分けされた。トウガンはあまりにも大きく、包丁をいれたらすぐに食べきらないと駄目な野菜だ。総料理長の判断待ちの野菜なのだ。
Mさんは恐る恐る俺に「トウガン」食べる?と聞いてきた。俺は躊躇した。
このやり取りは地域やPTAの役員を探すときと似ている。「いや、忙しいですよ」等々と言ってやり過ごす。
「トウガンはあまり食べないんですよ」。それを聞いたMさんは寂しそうに「あと6個あるんだ」と呟いて自分の畑に戻っていた。Mさんの後姿を見た俺は何かスマナイ事をしている気になった。
今は収穫できる野菜も少ないし、Mさんにはお世話になっているし、と頭の中をいろいろと駆け巡った。
「それ引き受けます」と後先考えずに言っていた。
Mさんの畑にあるズッシリとした「トウガン」を持った時、俺の腹は決まった。
家に持ち帰り、総料理長に恐る恐る「トウガン」を差し出した。ことの顚末を話したらすんなり引き受けてくれた。
そう、腹を決めればいいのだ。
でも、これがなかなか出来ない。
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