畑で育てていたスイレンを家に持ち帰り、そのボウフラ対策として金魚をいれた話を書いた。奴は期待に反し、ボウフラそっちのけで餌をねだる過保護なダメ金魚であった。
2年前、夏祭りで三女が金魚を持ち帰った。奴は体が一番大きいのをいいことに他の金魚を駆逐していったのである。正義感の強い俺はこんな奴をどうしても好きになれなかった。でも、三女に頼まれると水槽の水を綺麗にするフィルターを買ってきた。奴のため労力も金も出していたのであった。この不条理な状況を早く解消したいと思うようになったのである。
だから、1年前、畑のスイレン池が干上がってメダカが全滅した時に池に奴を入れようとした。そこには黒猫、カラスがやってくる。そこで奴の根性を叩き直し、少しは他の金魚の気持ちも分かるようにしたいと考えたのである。残念なことに、管理者の三女の反対に合いそれは実行できなかった。
ところが、三女は部活の忙しさもあって奴の世話をなおざりにするようなにった。見かねた女房が面倒をかわるようになったのである。女房は昔のトラウマからねだれるままに奴に餌を与え続けた結果、ボウフラを食べない使えない金魚になったと俺は見ている。
今は、奴はスイレンの葉っぱに隠れたり、水面で口をパクパクさせたりして新しい住処になれたようであった。でも、相変わらず餌をねだってきた。新居でも、モネ風の池を作る計画のある俺は、今度はボウフラ対策をメダカでなく錦コイや金魚をイメージしていた。そんな構想もあって、奴にボウフラを食べる使命を果たさせるため、俺は餌をあげず厳しく育てた。ところが、である。ヤツは先週から姿を見せなくなったのである。
管理責任のある俺は奴の安否確認を家族にした。金魚係りから解放された女房は『スイレンの根に絡まって死んでいるのではないか』と言う。次女は『カン太が食べたに違いない』と言う。誰も、生きているとは言ってくれないのである。
「カン太」とはカラスのことである。7年前、M農園が売却され時に俺が住む社宅に逃げってきたカラスに女房が名前を付けたのである。すぐにカン太には彼女が出来た。だが新たに1羽カラスが加わり、三角関係の末、カン太はふられ、長らく独り身であったようだ。でも、最近彼女が出来たということを女房から聞かされていた。
生存を信じている俺は、奴はスイレンの葉っぱに大量発生しているアブラムシが怖くて水面に上がってこられないのではないかと思った。先ずはアブラムシをなんとかしなければならない。安易に園芸用殺虫剤を使うと生きている奴にダメージが及ぶので、それは出来ない。前にこのブログで取り上げた食品成分で作られたカダンセーフでといいたいところだが、この状態ではボトル1本使っても無理なのである。効果は限定的である。
そこで、仕事柄いつもやっているように『いい解決策はあるはずだ』と念じることにしたのである。俺の潜在意識に考えさせることにしたのである。数日後、解決策が浮かんできた。
アブラムシは呼吸をしている。そしてあいつ等は水より軽い。スイレンを水の中に沈めた。葉っぱについていたアブラムシが苦しくなって水面に浮かんできた。翌日、スイレンの入っている発泡スチロール底を持ち上げて、塊なって死んでいるアブラムシを水ごとこぼして捨てた。水が半分ぐらいになった発泡スチロールの中には奴はいなかった。行方不明になったのである。どうやら次女説が正しかったようである。カン太が新しい彼女に奴をプレゼントしたというのが我が家の定説になった。
『恋人に去られたら新しい恋を見つければ忘れられる』という昔の「さんまと鶴太郎」のドラマのセリフを思い出し、俺は早々に子メダカを買った。
餌もねだらず、ボウフラどもを食べつくす、泳ぎ回るメダカを見て、俺の罪の意識もなくなった。だが、新居にモネ風の池に錦コイや金魚を飼い、優雅に眺めるという俺の風流は遠のいたのが残念でならない。
最後に女房が12年前にかいた詩を載せて奴の御冥福を祈りたい。
【金魚がかり】
○○ちゃんが金魚がかりになったけれど
いつもえさやりわすれてばかり
ついにかかりをやめちゃった。
ママがあとについたんだ。
でも、やめたとたんチェックする
『ママ、ちゃんとエサあげているの?』
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