「藤とスモークツリー」
「その藤、枯れているじゃないの」と藤に水をあげている俺に女房が言ってきた。2月の中旬にサカタのタネから送られてくることになり、這わせるパーゴラを急きょ俺に作らせた、あの藤の事である。
そのパーゴラには藤の1カ月以上後に送られてきたクレマチスがツルを伸ばし、蕾を付けている。パーゴラ下のレイズベットにはラベンダー、タイムが株を太らせながら、すでに花を咲かせている。とうに生を謳歌しているのである。
女房の一言で藤に起きている現実を認めざるをえなくなったのだ。2本とも幹には3か月間、ピクリとも動こうとしない芽があり、幹は白っぽく生気を無くしたようにも見える。
女房がデッキから家の中に入っていなくなったのを見計らい、俺は勇気を奮い、藤を抜くことにした。もし新しい根が出ていなければ死んだ藤になる。そうではなく死んでいた藤になり、これは「サカタのタネ」の責任になる。まっとうな会社であれば当然、何らかの償いが俺にあるはずだ。供給者責任である。開き直って、値上げなどしないのである。
新しいひげ根が出っていたのだ。2本とも生きていた。俺は嬉しくなり女房に報告した。そして、藤を植え直して念入りに水を与えた。ジョウロの水が余ったので、ついでに黒ポットで待機している苗や樹にも水を与えたのである。
その中に、スモークツリー ロイヤルパープルという赤紫色の葉を持ちスーモクの様な花を咲かせ紅葉も美しい樹がある。これは藤と同じ時、送られてきたものだ。同期の藤はすでに植えつけられ、後輩のバラなどにも先を越されていた。
この、スモークツリー日向でも日陰でも大丈夫なので、現在工事中の駐車場周りの日陰の花壇に植えようと3か月間も待せているのだ。藤とは違い、しばし水をもらえず、パーゴラ造りなどの作成であちらこちらに引っ越しさせられ、おまけに強風で倒されたままにされることも度々なのである。でも、こいつは一度もへこたれず、芽もなかったが今は美しい赤紫の葉をたたえている。
スモークツリーのけなげさ、タフさを見るにつけ、藤の不甲斐なさが募ってきた。ひげ根を喜んだがよく考えてみれば仕事の遅さにあきれるばかりである。おまけに、世話も十分、一等地も手に入れている。厚遇を受けているのに、この程度である。
俺は情けないので藤の事を藤殿(トウデン)と呼ぶことにした。
俺が生きている間に一度ぐらいは花を見せてもらいたいと思っている。
そのぐらいの気持ちでいないとやっていられない。
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